派遣社員のように期間の定めのある雇用契約を繰り返し更新しながら働いている方は、通算で5年働くと期間の定めのない無期雇用の従業員になれるチャンスがあります。
この記事では労働契約法の無期転換(5年ルール)のポイントを紹介していきます。派遣社員として長く働いているけど、自分はいつ無期雇用の従業員になれるのだろうか?と気になる方は是非参考にしてみてくださいね。
労働契約法とは?
まず、そもそも労働契約法とはどのような法律で何のために存在するのか紹介していきたいと思います。下記は労働契約法の第1条を引用してますが、労働契約法が存在する目的が記されています。
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
労働契約法 第1条
労働契約法が存在する目的として簡単にまとめると「労働者と雇用主のトラブルを未然に防止することを目指す法律」です。
本来、労働者を雇い入れる際は労働者と雇用主との間で労働契約が合意によって成立されます。しかし雇用主と労働者では労働者の立場が弱いので、もし雇用主が好き勝手できてしまうとトラブルが増えてしまいますよね。
そのため労働契約法では労働者を保護をするため(雇用主が好き勝手できないようにする)の法律でもあります。
労働契約法の無期転換(5年ルール)について
それではこの記事の本題に入っていきましょう。労働契約法の無期転換ルールについて紹介していきたいと思います。まずは労働契約法の無期転換について下記の条文をご覧になってください。
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
引用元:労働契約法 第18条
この無期転換について簡単にまとめると
派遣会社X社で通算5年以上働いているAさんが派遣会社X社に無期転換の申込みをすると派遣会社X社はAさんに従わなければならない。よってAさんは次の契約から派遣会社X社で無期従業員になれる。
ということになります。ちなみにAさんが無期転換の申込みをしなければ、今までと同じように有期雇用の派遣社員として働くことも可能です。
この労働契約法の無期転換については派遣会社で通算の在籍が5年を越えた時点で労働者が無期転換にするかどうか選べるものなので必ず無期転換にならなくてはならないという訳ではありません。
ただし無期転換を申込みしたときは派遣会社は断ることができないので、派遣会社が倒産などしない限り100%無期転換をすることができます。
労働契約法の無期転換の特例について
労働契約法の無期転換の特例についてですが、下記のような人は無期転換の申込みに関して適用外となるので注意が必要です。
- 高度な専門知識等を必要とする業務に従事している人
- 満60歳以上の労働者
- 期間が限定されるプロジェクトに従事している人
①の高度な専門知識を必要とする業務に関しては、下記になります。
- 公認会計士/医者/弁護士/一級建築士/税理士/薬剤師/社会保険労務士/不動産鑑定士/技術士または弁理士
- 農林水産業/鉱工業/機械・電気・建築・土木の技術者/システムエンジニア・デザイナーで年収1,075万円以上
- システムコンサルタントで年収1,075万円以上など
出典:厚生労働省
上記に該当する人の契約期間の上限は5年というように労働基準法で決まっております。
労働契約法のクーリング期間について
1度働いていた派遣会社への出戻りの場合でも通算5年以上在籍すれば無期転換の申込みができる可能性があります。
しかしクーリング期間が過ぎてしまうと在籍年数がリセットされて、また5年間働かないと無期転換の申込みをすることができません。下の図は厚生労働省の無期転換のパンフレットから引用したものですが、
まずクーリングの期間については6カ月間です。もし契約がない空白の期間が6カ月未満であれば、過去の契約を合算して通算5年で無期転換の申込みをすることが可能です。
一方、契約がない空白の期間が6カ月以上の場合は、通算の契約期間がリセットされてしまうので、5年後に申込みをすることができます。
無期転換の申込みの流れについて
前述で派遣会社で通算5年以上働いた場合、無期転換の申込みができる権利があることを紹介しました。こちらでは無期転換の申込みの流れについて紹介をしていきたいと思います。
無期転換の大まかな流れは下記の通りです。
- 派遣会社から無期転換の希望の有無が確認される
- 派遣会社から配布される無期転換申込み書を記入する
- 記入した無期転換申込み書を派遣会社に提出する
派遣社員側がおこなう手続きは①~③だけです。書類を書いて提出するだけなので非常に簡単です。提出した無期転換申込み書を派遣会社の方で確認ができたら、派遣会社より無期転換申込み受理書が配布されます。これで手続きの全てが完了し、次回の契約から無期従業員としての契約に切り替わります。
無期転換メリットとデメリットについて
最後に無期転換で正社員になることのメリットとデメリットについてお伝えしていきます。
無期転換のメリット
- 雇用が安定する
- 待遇が少し改善する
- 派遣ではないという優越感を感じることができる
- 仕事に対して責任感がより一層芽生えモチベーションが上がる
- 組織の一員として仕事をしている実感が芽生え仕事のやりがいを感じることができる
無期転換のデメリット
- 雇止めのリスクはなくなったが待遇の改善がされない場合もある
- 今までは仕事を自由に選べたが、会社からの指示に従わなければならないので、自由度が少なくなった
- 会社都合で勤務先を異動しなければならない可能性がある
- 通算5年を直前に法律対策で派遣会社から雇止めのリスクがある
- 今までよりも責任やプレッシャーを感じる場面が多くなる
これらが労働契約法の無期転換によって考えられるメリットとデメリットになります。
無期転換に関する評判・口コミについて
実際に無期転換に関してSNS上で投稿されている評判・口コミについて調査してみました。
まとめ
労働契約法の無期転換に関するまとめは下記の通りです。
- 通算5年を超えた派遣社員が無期転換を申し出をした場合、派遣会社はそれに従わなければならない
- 無期転換の実態は雇用は安定するが、それ以外は変わらないと感じている派遣社員が多い
無期転換に関してメリットやデメリットそれぞれありますが、自分自身のベストな選択肢を見つけられると良いですね。決して無期転換になれば良いとか悪いとかではないので、あくまでも個人の考え方によるかと思います。
ただ雇用の安定という面では有期雇用よりも無期雇用の方が安定するかと思いますので、自身のワークライフバランスを考えたうえで、ベストな選択をするようにしてくださいね!
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